1977 年 43 巻 5 号 p. 557-561
昭和50年(1975年)に,富山,千葉,三重および鳥取の各県において,ナシ黒星病に対してチオファネートメチル剤およびベノミル剤の防除効果が低下する現象がみられた。そこで,これらのナシ園から分離した菌株について,両薬剤に対する耐性の有無を検定した。
In vitroの菌糸生育試験の結果,両薬剤に耐性を示す菌株が多数検出された。胞子発芽試験の結果では,発芽管長は耐性菌株と感性菌株の間に差が認められたが,発芽率では差は認められなかった。さらに耐性菌株を,薬剤を処理したナシ生葉に接種して,薬剤防除効果の低下現象を再現することができた。
以上のことから,チオファネートメチル剤およびベノミル剤の効力低下が観察された地域では,両薬剤に耐性のナシ黒星病菌が圃場に分布し,防除効果の低下に重要な役割を果たしたものと推定される。