日本植物病理学会報
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形態的に異なるタバコカルス中でのタバコモザイクウイルスの移行
大村 敏博脇本 哲
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1978 年 44 巻 2 号 p. 184-189

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抄録

細胞の密度が異なるタバコカルスから5×5×15mmのブロックを切り取り,それらの上端に昆虫針を用いてタバコモザイクウイルス(TMV)を接種した。これらのブロックを定期的に3部分に分割し,各部分のTMV濃度をNicotiana glutinosaの半葉法を用いて検定した結果,カルスの感染率,TMVの増殖率および移行速度は細胞が密に相接したカルスにおいては疎に相接したカルスにおけるよりも高かった。またTMVの移行速度は密なカルスでは10日間に8mm以上であったが,疎なカルスでは30日間に3mm以下であった。両カルスの組織切片を電子顕微鏡観察した結果,篩管様細胞や原形質連絡は密なカルスではしばしば観察されたが,疎なカルスでは認められなかった。
疎なカルスにおいてTMVの感染,増殖および移行の程度が著しく低いことは,好適な条件下で継代培養した疎なカルス中でTMV濃度が急激に低下する原因の一部と考えられる。

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