日本植物病理学会報
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Thanatephorus cucumris (Frank) Donkの担子胞子によるテンサイ葉の感染と病斑形成
内藤 繁男杉本 利哉
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1978 年 44 巻 4 号 p. 426-431

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抄録

テンサイ葉にThanatephorus cucumeris (Rhizoctonia solani菌糸融合群第2群第2型)の担子胞子を接種し,その侵入行動と病斑形成過程について観察し,圃場の病斑と比較した。
1. 担子胞子は発芽管の先端に付着器を形成して角皮貫穿し,表皮細胞あるいはその下の細胞にstroma様菌糸塊をつくり,周囲に褐色の壊死部を有する直径1mm前後の環状退緑色の1次病斑を形成した。この病斑はその後拡大することはなかった。
2. 1次病斑は中位葉あるいは展開した新葉に多く見られ,老熟した下位葉にはほとんど発現しなかった。
3. 担子胞子を接種したテンサイをそのまま湿室に保つと,1次病斑から葉面に現われた菌糸は気孔から侵入し,暗緑色,不整形の2次病斑を形成し,それがさらに拡大あるいは融合して大型になり,典形的な葉腐れ症状を呈するに到った。この場合,病斑部にstroma様菌糸塊は認められなかった。
4. 1次病斑形成後のテンサイを乾燥条件下に置くと,2次病斑は形成されず,しばしば病斑中心部が脱落する。再びこれを湿室に入れると,2次病斑が現われた。
5. 圃場のテンサイ葉にも,stroma様菌糸塊を持つ1次病斑が認められ,また2次病斑の中に1次病斑は残存し,明らかに区別された。

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