日本植物病理学会報
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プロサイミドンの灰色かび病菌に対する作用機構
久田 芳夫加藤 寿郎川瀬 保夫
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1978 年 44 巻 4 号 p. 509-518

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抄録

殺菌剤プロサイミドン(S-7131,スミレックス(R))は,灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の菌糸細胞数の増加を処理後直ちに抑えたが,菌体乾重は薬剤の存在下でもしばらく対照と同様に増加し,処理3時間後頃からその阻害が明瞭となった。菌体の代謝活性に対するプロサイミドンの作用を検討したところ,呼吸は殆んど影響されなかった。菌体中の蛋白,RNAおよびDNA量の増加は阻害されたが,その程度はいずれも菌体乾重増加の抑制とほぼ一致した。3H-ウリジンの酸可溶性分画および不溶性分画への取り込みは初期に,しかも強く阻害された。この阻害は,プロサイミドンが細胞膜の透過機能に影響を与え,生じているものと推定された。14C-酢酸の全脂質への取り込みに対する阻害は弱く,また特定の脂質への取り込みを選択的に阻害することもなかった。プロサイミドンは細胞壁の合成を著しく促進した。しかし,薬剤の存在下で合成された細胞壁の構成成分に特に変化は認められなかった。B. cinereaにおいて,プロサイミドンの第一次作用点はまだ明確でないが,プロサイミドンは細胞膜に何らかの作用をし,その結果として膜の透過機能や細胞壁合成に影響を及ぼしていると考えられた。

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