1978 年 44 巻 5 号 p. 561-569
イネ白葉枯病菌N5874とBdellovibrio細菌BdN6801における宿主-寄生者関係の微細構造を常法に従って超薄切片を作成し,電顕観察した。
X. oryzae細胞の核様物質や細胞内容物は,Bdellovibrio細菌の吸着時から侵入初期において変質,崩壊し,顆粒状になってまばらに分布し,X. oryzae細胞全体が球状に膨らんだ。そして,宿主細胞壁に侵入孔が形成され,BdN6801は比較的なめらかに侵入した。宿主細菌の細胞質膜はほぼ完全なままで残り,Bdellovibrio細菌はその細胞壁と細胞質膜との間に侵入し,細胞質膜に隣接してらせん状に生長し,侵入時の数倍の長さに達した。このBdellovibrio細菌の生長にともなって宿主細菌の細胞質は徐々に消失し,最後に宿主細菌細胞は完全にゴースト化した。らせん状に生長したBdellovibrio細菌はゴースト化した宿主細胞壁の崩壊前に数個体に分裂した。
イネ白葉枯病菌N5874とBdN6802との組合せにおいても寄生の大部分の過程はBdN6801の場合と同様であったが,吸着の際Bdellovibrio細菌の頭部に膨らみがみられ,侵入初期においてその頭部にメソゾームが観察されることが多く,また宿主の細胞壁が硬く侵入孔の大きさが不十分のためかBdellovibrio細菌はくびれながら侵入した。