日本植物病理学会報
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エンバク冠さび病菌およびコムギ赤さび病菌の人工培養
勝屋 敬三柿島 真佐藤 昭二
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1978 年 44 巻 5 号 p. 606-611

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抄録

エンバク冠さび病菌race 367の一菌系およびコムギ赤さび病菌race 45の一菌系の夏胞子を用い,人工培地上で培養を行なった。
供試菌の夏胞子は,aseptic leaf culture法により,無菌的に多量に得ることができた。
両菌の夏胞子をそれぞれ人工培地上に高密度で接種したところ,両菌は良好に発芽し,菌糸を伸長させて生育を続け,約1∼2週間後には気中菌糸の豊富な白色のコロニーを形成した。約1.5∼2ヶ月後に至ると,コロニーの一部は白色から暗褐色に変化した。この変色分を観察すると,子座が形成され,子座の一部には夏胞子および冬胞子様の器官を観察することができた。培地上に形成されたコムギ赤さび病菌の冬胞子様器官は,寄主植物上の冬胞子と形態的に類似していたが,培地上に形成されたエンバク冠さび病菌の冬胞子様器官は,寄主植物上の冬胞子と形態的に異り,冬胞子の先端にエンバク冠さび病菌の特徴である角状突起が観察されなかった。このことから,さび病菌を人工培地上で培養したばあい,形成される胞子は,寄主植物上の胞子と形態的に異なる可能性があることが示唆された。

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