抄録
キュウリモザイクウイルス(CMV)の検出,診断のための簡便な血清学的手法として,抗血清寒天スライド法(SRD法)と簡易二重拡散法(SDD法)を案出した。
両方法はともにスライドグラス上での寒天ゲル内拡散法を修正したものであり,抗原用の槽を作るかわりに寒天(SRD法では抗血清を混合した)上に〓紙片を置き,その上に24%NaCl液で磨砕した植物組織をのせて抗原を拡散させた。また,SDD法は抗血清を〓紙片に含ませて寒天上の抗原用〓紙に並置する方法である。
試料をNaCl処理することにより,CMV抗原の拡散速度と血清反応は,無処理試料に比べて早く,かつ明瞭となり,1夜後にはササゲによる生物検定と同程度以上の精度でウイルス検出結果の最終判定が可能であった。また,供試したCMVの5分離株はいずれも同様に検出された。
各種植物からのCMV検出に両方法を適用することができたが,SRD法では数種の主要野菜を除き,植物の種類によっては非特異沈澱を生じ,血清反応の判定に支障のあるものもあった。一方,SDD法では非特異沈澱がウイルス検出の障害となることはSRD法に比べて少なかった。