日本植物病理学会報
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オンシツコナジラミで伝搬されるキュウリならびにマスクメロンの黄化病とその病原,キュウリ黄化ウイルスについて
山下 修一土居 養二與良 清吉野 正義
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1979 年 45 巻 4 号 p. 484-496

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抄録

近年関東各地でハウス栽培のキュウリやマスクメロンに葉が黄化し,収量が激減する病気が多発している。本病の病徴は最初,葉の脈間に黄点を生じ,次いで葉は鮮やかな黄色を呈して粗剛になり,下方に巻く。主茎はほとんど萎縮しないが,子蔓の伸長が不良となり,着果数が減少し,果実の肥大も抑えられる。病葉をDN法で観察したところ,巾約12nm,長さ約1,000nmで,らせん構造の不明瞭な糸状のウイルス粒子が少数ながら検出された。本ウイルスはキュウリ,マスクメロンともに,自然感染株でも虫媒接種により感染発病させた株でも,篩部の各種細胞,稀に木部細胞,の細胞質に散在あるいは凝集して観察された。1例ではあるが,キュウリではウイルス粒子が核内に存在している所見が得られた。感染細胞ではウイルス粒子のほかに,電子密度の高い蛋白性果粒体と,核酸様繊維を内包するvesiclesが特異的に認められた。一連の電顕観察の結果では,これらの果粒体とvesiclesはウイルスの増殖に関係があることが示唆され,viroplasmと考えられた。感染植物では篩部壊死がごく普通に観察され,これに伴って葉緑体内のでん粉滞積が葉肉細胞で顕著に観察された。本ウイルスは汁液接種によっては伝搬しなかったが,本病が発生しているハウス内で病葉から採集したオンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum),あるいは病葉を吸汁したオンシツコナジラミにより高率に伝搬され,感染発病した株から再び上記の糸状ウイルスが検出された。本ウイルスの寄主範囲はウリ科植物に限られているように思われた。以上の結果から,この糸状ウイルスが本病の病原であると考えられたので,これをキュウリ黄化ウイルス(cucumber yellows virus)と命名した。なお,本病に対しキュウリ黄化病,マスクメロン黄化病の病名を与えた。

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