1979 年 45 巻 5 号 p. 705-711
ジャガイモ品種リシリおよびユキジロの塊茎および芽・茎の各組織切片に酢酸-2-14Cを与え,リシチンへの放射能の取り込みを調べることによって,各組織におけるリシチン合成を検討した。リシチンに放射能が取り込まれていることは,リシチンのbis (3, 5 dinitrobenzoate)誘導体を再結晶して,その放射能比活性が変化しないことにより証明した。リシリ塊茎diskでは,リシチン合成経路は切断後30分ですでに作動していた。リシリおよびユキジロの塊茎から暗黒中で生じた芽では,切片作成後10分ですでにリシチン合成経路は存在していた。リシリの塊茎から伸びた茎(長さ約10cm)の先端1cmの部位でもすでに10分で認められその合成能力は茎の先端から4cm下方の部位よりも高い値を示した。これらのことは,代謝活性の高い無傷の若いジャガイモ組織では,リシチン合成経路が作動していて,又,塊茎組織においては,傷害(切断)によって,それが急速に誘導されることを示唆した。