日本植物病理学会報
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北海道のメロン(Cucumis melo L.)より分離されたsquash mosaic virus
吉田 幸二後藤 忠則根本 正康土崎 常男
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1980 年 46 巻 3 号 p. 349-356

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抄録

1. 1971年夕張市で採集したモザイク症状を示すメロンから分離したウイルスにつき各種性質を調べた。
2. 寄主範囲は10科41種のうちウリ科とエンドウ,スイートピーに限られた。
3. 粗汁液中の不活化温度は65~70C(10分),希釈限界は50,000~100,000倍,保存限界は12~14日(20C)であった。
4. モモアカアブラムシ,ワタアブラムシでは伝搬されず,ウリハムシ,ウリハムシモドキ,オオニジュウヤホシテントウ,トホシテントウで伝搬された。ウリハムシでは最高16日間,オオニジュウヤホシテントウでは最高4日間の伝搬持続期間であった。
5. 種子伝染はメロン類では札幌キングで13.5%,アールス・フェボリット0.5%,ハネデュー1.0%,スパイシー15.3%,プリンスメロン10.7%であり,カボチャ(芳香青皮栗)では2.0%の割合で起こったが,カボチャ(会津早生),キュウリ(加賀青長節成,ピックル),スイカ(新三笠,新大和2号)では認められなかった。
6. ハサミ,手を用いた整枝や病植物の葉と健全植物の葉との接触でウイルスの伝染がおこった。
7. ウイルス粒子は径約25~30nmの球形粒子である。超薄切片を作製しウイルス粒子の細胞内存在様式を調べたところ,柔組織細胞の細胞質に管状の封入体様構造物,液胞内にウイルス粒子の集塊および結晶が観察された。
8. 家兎を用いて作製した抗血清は重層法で1,600倍の力価を示した。本抗血清はcucumber mosaic virus (CMV), muskmelon necrotic spot virus (MNSV)とは反応しなかったが,岡山で分離されたSMVとの間で反応が認められた。
9. 以上のことから本ウイルスはSMVと同定された。和名はスカッシュ・モザイク・ウイルスとしたい。本ウイルスはNelsonらの分類に従うとSMVのI群に属する。
10. 北海道に発生するメロンのウイルス病の病原ウイルスを判別植物を用いて調べた。供試72株中, CMV 47株, watermelon mosaic virus 11株, SMV 5株, cucumber green mottle mosaic virus 3株, MNSV 5株, tomato ringspot virus 1株が分離され, CMVが過半数で,全道に最も普遍的に分布することがわかった。

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