日本植物病理学会報
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わが国に発生したIris Severe Mosaic Virusの性質
井上 成信宮地 邦明光畑 興二
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1981 年 47 巻 2 号 p. 182-188

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抄録

本報はモザイク病を発生する球根アイリスから最も普通に検出される病原ウイルスについて調べ,これをiris severe mosaic virusと同定し,その諸性状について記載したものである。
本ウイルスは汁液接種を行った13科44種の植物のうち,球根アイリスに全身感染し, C. amaranticolor, C. quinoa,ツルナ,センニチコウに.局部感染, N. clevelandiiの接種葉に無病徴感染した。これらの植物への感染性は免疫電顕法により再確認できた。本ウイルスはモモアカアブラムシおよびワタアブラムシによって非永続的に伝搬された。汁液中での不活化温度は60~65C,希釈限度は10-3~10-4,保存限度は3~4日(20C)であった。ウイルス粒子の形態は750×13nmのひも状である。病葉のDN法試料の電顕観察では平板状または管状の細胞質内封為体が認められ,その面には線間隔約5.3nmの平行微細構造がみられた。感染植物細胞の超薄切片像で,細胞質内に散在するウイルス粒子が認められ,またpinwheel, laminated aggregates, bundleなどの細胞質内封入体が観察された。
本ウイルスはISMVの抗血清と免疫電顕法により粒子の表面に特異抗体が付着し,反応陽性.と認められた。同試料に混入したCyMVは同抗血清と反応しなかった。また本ウイルスはIMMV, PVY, BYMVおよびTuMVの抗血清とは微凝集反応法で反応が認められなかった。

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