日本植物病理学会報
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Diaporthe citriによるカンキツ黒点病ならびに軸腐病に関する研究
第3報D. citriの感染に対するカンキツ果実および葉の反応過程
有本 裕本間 保男見里 朝正
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1982 年 48 巻 5 号 p. 559-569

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抄録

D. citriの侵入をうけたウンシュウミカン(Citrus unshiu)葉の表皮細胞は接種1日後には顆粒化し,2日後には褐変した。つづいてその周囲の細胞の顆粒化,褐変が起こり,接種7日後には3∼5層の細胞を半径として,最初に褐変した表皮細胞を中心に半球形状に褐変した。その後,褐変細胞群に隣接した細胞が分裂し,2細胞となった。細胞分裂はくり返され,10∼12層の細胞から成るカルスが形成された。さらに褐変細胞群とカルス組織との間に周皮が形成された。このため,病原菌の侵入をうけた部位は健全組織から遮断された。黒点病斑はこれらの組織から構成されたものの総称である。したがって,カンキツの自己防衛のために形成されるものと推察された。さらにスターメラノーズ(銅の薬害)および傷害跡も褐変細胞群,カルスおよび周皮から構成されており,両者はともに黒点病斑形成と同様の過程で形成されることが明らかにされた。以上のことから,カンキツは病原菌の侵入,薬剤の浸透,機械的傷害などに対して自己防衛反応を引き起こし,防衛組織を形成すると考えられる。

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