日本植物病理学会報
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ダイズべと病菌の蔵卵器および卵胞子形成と罹病葉の光合成との関係
稲葉 忠興守中 正
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1982 年 48 巻 5 号 p. 585-591

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抄録

接種7日後の病斑片を,ろ紙1枚,殺菌蒸留水6mlを入れた9cmシャーレ中に浮かべ,15C暗黒(暗処理)または光照射(明処理)下に置き,蔵卵器および卵胞子形成と光との関係を検討した。蔵卵器および卵胞子形成量は明処理で著しく多く,暗処理で少なかった。処理7日後における蔵卵器と卵胞子の合計数の比率(明処理/暗処理)は,2.9∼4.0であった。暗処理では蔵卵器は処理3日後,卵胞子は処理5日後から形成され始めたが,明処理ではこれより早く,蔵卵器は処理2日後,卵胞子は処理3日後から形成された。明一暗処理日数を7日間の範囲内で変えたところ,明処理日数が長いと卵胞子形成量が増加した。1日の光照射時間を0, 8, 24時間とし,7日間処理すると,卵胞子形成量は光照射時間が長いほど多かった。光合成阻害剤のDCMU水溶液(0∼10-4モル濃度)に病斑片を浮かべ,7日間明処理または暗処理した。暗処理ではDCMU処理しても卵胞子形成量が全く変わらないことから,DCMUが直接卵胞子形成に影響を及ぼさないと考えられた。一方,明処理では10-6∼10-4モルで卵胞子形成が著しく抑えられた。これは,明処理では10-6∼10-4モルで宿主の光合成が抑えられ,その結果,卵胞子形成が抑制されたと推察された。以上の結果,ダイズべと病菌の卵胞子形成は宿主の光合成に依存していると考えられる。

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