日本植物病理学会報
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ホウレンソウより分離されたbean yellow mosaic virus, tobacco mosaic virusおよびbeet necrotic yellow vein virus
藤沢 一郎土崎 常男飯塚 典男
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1982 年 48 巻 5 号 p. 592-599

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抄録

1. 北海道各地よりホウレンソウのウイルス様症状株を採集し,病原ウイルスの分離・同定を試みた結果,わが国ですでに報告されているCMV, TuMV, BMV, BBWVと未報告のBYMV, TMV, BNYVVなど7種類のウイルスが分離された。本報告は,BYMV, TMVおよびBNYVVの諸性質について述べた。
2. 芽室町のモザイク症状株から分離されたウイルスは8科28種の植物に感染した。本ウイルスは,モモアカアブラムシで非永続伝搬され,長さ約750nmのひも状粒子であった。不活化温度は55∼60C (10分),希釈限界は1,000∼5,000倍,保存期限は2∼4日(20C)であった。家兎を用いて作製した抗血清は本ウイルスおよびBYMV-Pと反応し,寒天ゲル内で形成された両ウイルスの反応帯との間に分枝線を形成した。またソラマメ,エンドウの上葉でえそモザイクを現わすことから本ウイルスをBYMV-Nと同定した。
3. 札幌市の2か所から採集したモザイク株から分離されたウイルスは,寄主範囲が広く9科46種に感染した。本ウイルスは多くのアブラナ科植物に感染し,粒子は長さ約300nmの桿状で,不活化温度は90∼95C (10分),希釈限界は10,000∼50,000倍であった。家兎を用いて作製した抗血清は本ウイルスおよびTMV-Cと特異的に反応した。以上の諸結果から本ウイルスをTMVのアブラナ科系統と同定した。
4. 北見市で採集したモザイク株から分離されたウイルスは,寄主範囲が狭く,10科34種の植物のうち3科12種に感染した。本ウイルスは3種類の長さの桿状粒子(80∼100, 250∼270, 350∼390nm)からなり,土壌伝搬した。不活化温度は65∼70C (10分),希釈限界は1,000∼5,000倍,保存期限は2∼4日(20C)であった本。ウイルスは,BNYVV抗血清と明瞭に反応することからBNYVVと同定した。

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