1983 年 49 巻 4 号 p. 488-494
免疫電気泳動法を用いタバコモザイクウイルス(TMV)の微量定量のための簡便法を検討した。抗TMV抗体にはFITCを結合させ泳動後その螢光からTMVの検出・定量を試みた。FITC結合抗体(FA)と,同力価の無結合抗体(NA)を使用し泳動に対する影響を調べた。泳動後FAは紫外線下で,NAはAmido Black染色で,それぞれ検出し泳動距離を測定したところ,両者とも各種濃度のTMVに対して同様の泳動結果を得た。FAもAmido Blackに対して染色されたが低濃度のTMVではFAを紫外線下で測定した場合にのみ検出可能であった。FAを使用して検出しうるTMVの最低限界は0.008μgで,定量は0.05μgのTMVまで可能であった。また,本実験では0.4% FAを使用した場合,濃度範囲の最も広いTMVの泳動を可能にすることから,多数の試料中の未知濃度のTMVを予備定量するのに適していることが明らかになった。種々の濃度のTMVに対して最適なFA濃度を求めたところ,それぞれの濃度のFAで直線関係が得られ,また,たがいに平行関係を示した。本法をトマト葉中のTMVの定量に適用した結果,0.05g生重(直径2∼3cmのトマト葉leaf discに相当)からでも再現性の高い結果が得られた。