1984 年 50 巻 3 号 p. 368-374
直径約35nmの小球形ウイルス様粒子は,イネragged stunt,萎縮,黒条萎縮,grassy stuntウイルス罹病イネばかりでなく,ウイルスを接種していない“健全”イネからも分離された。さらに,同じような大きさと形をした粒子は,rice tarsonemid mite, Steneotarsonemus spinki Smiley(ダニ目,ホコリダニ科)の成虫および卵のdip試料中にも見い出された。そのホコリダニが寄生するイネ葉鞘の内側の表皮は褐変していた。毛筆によってダニを完全に除去した葉鞘部から純化して得られた35nm粒子に対する抗血清は,ダニの成虫および卵のdip試料に見い出される粒子と反応した。また,純化35nm粒子は,典型的な核タンパク質の紫外線吸収パターンを示した。
ELISAによって,粒子は,イネの葉鞘およびモミ殻から検出され,葉身,根およびイネ育生培養水からは検出されなかった。葉鞘部の超薄切片中の表皮組織および柔組織細胞には,多量の35nm粒子の集塊が観察された。
本論文は,イネで増殖すると思われるホコリダニ媒介性ウイルス様粒子についての最初の報告である。