1984 年 50 巻 4 号 p. 515-521
カボチャモザイクウイルス(WMV)とジャガイモYウイルス(PVY)のHCは,カブモザイクウイルス(TuMV)のアブラムシ伝搬に介在して有効である。HC源としてWMV罹病葉を前もって吸汁させ,膜越吸汁法により純化TuMVを獲得させた時,モモアカアブラムシは同時に2種類のウイルスを伝搬できた。モモアカ,ゴボウヒゲナガ,マメアブラムシはTuMVを容易に伝搬するが,マメアブラムシはWMVを伝搬せず,ゴボウヒゲナガアブラムシは稀にしか伝搬しない。しかし,WMV-HCを獲得させたのちに,純化ウイルスを吸汁させたゴボウヒゲナガ,マメアブラムシはTuMVを伝搬できなかった。罹病葉と純化ウイルスの連続吸汁させる方法を用いて,WMV-およびPVY-HCのモモアカアブラムシによる獲得・保有各時間を調べたところ,両ウイルスのHCとも獲得時間が短いほど,TuMVの伝搬を高率に補助した。HC保有時間は,あらかじめWMV-, PVY-HCを吸汁させたモモアカアブラムシをガラスびん内に放飼した時,7∼9時間,健全葉上に放飼した時,10∼30分であった。これらの結果から,アブラムシに獲得されたHCは吸汁時間が長くなると,その活性を失うと考えられる。