日本植物病理学会報
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花木類花弁の灰色かび病菌による汚染とその伝染源としての役割
小林 享夫
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1984 年 50 巻 4 号 p. 528-534

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抄録

1. 各種花木類の開花したばかりの新鮮な花弁も,すでに約60%が各種菌類の汚染をうけていた。
2. 花弁汚染菌類のうち,灰色かび病菌が最も検出率が高く,主要な花弁汚染者である。本病菌による花弁の汚染は,季節的変動はあるものの1年を通じて認められる。
3. 他の菌類ではAlternaria, Colletotrichum, Epicoccum, Macrophoma, PestalotiopsisおよびPhomopsis属菌が主な汚染菌類であった。
4. 灰色かび病汚染花弁の多くは地上に落ちたのち大量の分生子を形成し,これが伝染源になって再び汚染あるいは感染をおこすものと考えられる。落花弁上の胞子形成には季節変動はみられず,常時各種の花弁上に大量の産生がある。
5. 花弁の汚染と分生子形成から供試樹種は四つの群に分けられるが,総合すると,伝染源としての役割を果たす花弁上に分生子を形成するグループと,胞子形成がなく伝染源とはならないグループとの二つに大別される。それぞれのグループでは花または花弁の形質が異なる樹種を多く含む傾向がみられた。
6. 飛散した落花弁の付着による健全茎葉への感染発病も少数ながら観察され,これもひとつの伝染源としての地位を占める。落花弁の付着に由来する発病例5樹種のうち,ビョウヤナギ,キョウチクトウ,キンモクセイ,ナツツバキの4樹種は本病菌の新宿主である。
7. 各樹種から分離した灰色かび病菌菌株のPDA培地上に形成された分生子の大きさは10∼19×5.5∼10μmの範囲に入り,分離源の違いによる大きな変異は認められなかった。

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