日本植物病理学会報
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チャ輪斑病菌(Pestalotia longiseta)接種チャ枝における菌の交代
安藤 康雄浜屋 悦次鬼木 正臣
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1985 年 51 巻 5 号 p. 576-581

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抄録
チャ輪斑病菌Pestalotia longisetaを接種したチャ枝(品種「やぶきた」)の枯死部分での菌の交代現象について検討した。接種は,P. longisetaの分生胞子懸濁液を茶株面に噴霧後,摘採機により刈り取る方法で行った。接種後3, 10, 20, 30および37日に被害枝から菌の分離を行ったところ,P. longisetaの検出率は,それぞれ85.2, 78.1, 40.6, 47.6, 6.6%と時間の経過とともに低下する傾向を示した。これに対し,チャ赤葉枯病菌Glomerella cingulataのそれは,それぞれ7.4, 15.6, 47.5, 42.2, 86.2%と逆に高くなった。さらに,G. cingulataは被害枝の下部より高率に検出された。一方,被害枝について顕微鏡観察したところ,枝の上方の枯死部ではG. cingulataの分生胞子が多数形成されており,下方の外見上健全な部分ではG. cingulataの分生胞子および付着器が多数みられ,また,表皮細胞内に感染しているのも認められた。以上より,G. cingulataは外見健全な枝の表皮細胞に潜在感染しており,P. longisetaが切口から侵入し,感染部位の枯死とともに活動を開始し,多数の分生胞子を速やかに形成して下部に供給し,下方の健全部はG. cingulataの濃厚感染を受け,結果的にG. cingulataが被害枝上で優勢になっていくものと考えられた。
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