日本植物病理学会報
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ソテツえそ萎縮ウイルスのウイルス粒子,核酸及び外被蛋白質の諸性質
花田 薫楠木 学岩木 満朗
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1986 年 52 巻 3 号 p. 422-427

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抄録

ソテツから分離されたソテツえそ萎縮ウイルス(CNSV;ネポウイルス群に属すると考えられる)の諸性質をさらに検討した。CNSVのM成分とB成分の沈降係数はそれぞれ85Sと112Sであった。塩化セシウム中での浮遊密度はM成分が1.404g/cm3, B成分は1.472g/cm3であった。M成分とB成分は単独では低い感染性しかなく,両成分を混合すると感染性は5~20倍高くなることから感染には両成分が必要と考えられた。両成分は異なる大きさの1本鎖RNA成分を別々に含み, M成分に含まれるRNA2の分子量は1.5×106, B成分に含まれるRNA1の分子量は2.5×106であり, RNA1とRNA2の両方が感染に必要であった。B成分とM成分に含まれる外被蛋白質は同じ大きさであり,その主成分の分子量は65Kであった。これらの諸性質はネポウイルスに属するトマト黒色輪点ウイルス(TBRV)に最もよく似ているが, CNSVはTBRV及びTBRVと血清関係のあるウイルスと血清学的類縁関係が認められなかった前報(1986)の結果から考えると, CNSVは未報告のネポウイルスであると結論された。

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