1986 年 52 巻 3 号 p. 488-491
二十世紀ナシ葉上の黒斑病病斑から,多数の単胞子分離菌株を得,それらの病原性の不安定性について,分生胞子発芽時のAK毒素生成能にも注目しながら検討した。10個の病斑より分離した197菌株のうち, 28菌株はすでに分離直後に病原性を失なっていた。さらに,一病斑当り10菌株づつ選ばれた100菌株を継代培養したところ,病原性失活菌株が徐々に出現した。病斑ごとに精査してみると,新植二十世紀ナシ園の病斑からは,概して,病原性の不安定な菌株が多く得られ,永年栽培の持続しているナシ園の病斑からは,病原性の比較的安定な菌株が得られた。病原性失活菌株は,例外なく, AK毒素生成能を喪失していたが,培養菌糸や分生胞子の形態に何ら変化も認められなかった。