日本植物病理学会報
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葉身の一染色透明化法によるイネといもち病菌との相互作用の細胞学的解析
彭 友良獅山 慈孝山本 昌木
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1986 年 52 巻 5 号 p. 801-808

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抄録

イネといもち病菌との相互作用を細胞学的に解析するために葉身の一染色透明化法を考案した。本法によると,イネ葉身におけるいもち病菌は接種18時間後に侵入を始め,その後の侵入率は,従来報告されてきた値よりも高く,接種72時間後に親和性組合せおよび非親和性組合せのいずれにおいても30%を越えた。また,いもち病菌の侵入したイネ葉身表皮細胞はその反応によって5型に分けられた。感染菌糸の染色には塩基性色素より酸性色素,とくにアニリンブルーが効果的であった。また,染色前にイネ葉身を酸性に保つ必要があり,その処理は塩酸より酢酸の方がよく,イネ葉身細胞を壊すことがなかった。染色液に適量のエタノール(染色液の1/3)を加えることによって感染菌糸の染色が促進され,オートクレープによる加熱染色によってもイネ葉身細胞は崩壊しなかった。以上に述べた方法によればイネ葉身におけるいもち病菌の感染行動とイネの細胞反応をより詳細に調べることができると考えられた。

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