日本植物病理学会報
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ニホンナシ黒星病菌分生子懸濁液の効率的濃縮法
梅本 清作村田 明夫長井 雄治
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1989 年 55 巻 3 号 p. 309-314

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抄録

ナシ黒星病菌分生子懸濁液を遠心処理により効率的に濃縮する方法について検討した。懸濁液をそのまま遠沈管に取り遠心処理を行うと,分生子は浮く性質が強く,遠沈管の底部に効率よく集めることはできなかった。しかし,分生子懸濁液に薄い寒天液を少量添加した後,遠心処理を行ったところ,底部に寒天が集まり,その中に効率よく分生子が捕えられた。その効率は,10mlの分生子懸濁液に0.1%寒天液を0.5ml添加した場合,理論値がもとの胞子濃度の50倍に対して実測値は41倍,同様に1ml添加した場合には理論値の25倍に対して22.1倍であった。秋季にナシの枝を流下する雨水を採取し,本法により濃縮し,雨水中の分生子数を光学顕微鏡で調査したところ,十分調査可能であり,分生子数を定量的に把握することが可能であった。寒天液は約5Cの冷蔵庫中に保存すれば約6ヵ月以上腐敗しなかった。本濃縮法を寒天液濃縮法(ASC)と呼称することにしたい。

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