日本植物病理学会報
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空中を飛散するGibberella zeae子のう胞子のマイコトキシン生産性
上田 進芳澤 宅實奈尾 雅浩
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1990 年 56 巻 3 号 p. 331-336

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抄録

ムギ作圃場における空中飛散G. zeaeの子のう胞子およびイネ刈株残渣の子のう殻から分離したG. zeaeを精白米培地で培養してマイコトキシン生産性を調べた。飛散子のう胞子32菌株すべてがゼアラレノンを生産し,20菌株(62.5%)はトリコテセン系マイコトキシンを生産した。後者のうち15菌株はニバレノールとフザレノン-X生産菌,4菌株はデオキシニバレノールと3-アセチルデオキシニバレノール生産菌,1菌株はT-2トキシンとネオソラニオール生産菌であった。また,イネの刈株残査から分離した14菌株のうち,トリコテセン生産性を示した13菌株はすべてニバレノール生産菌であり,他の生産菌は認められなかった。このように,寒天培地を用いた簡便な胞子採集方法でマイコトキシン生産性を有する飛散胞子がきわめて高率に捕捉されたことは,ムギ作圃場における有毒飛散胞子の予察の可能性を示唆している。

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