日本植物病理学会報
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リンゴ斑点落葉病菌が生成するAM毒素の二つの初期作用点とその病理的意義
霜村 典宏尾谷 浩田平 弘基児玉 基一朗甲元 啓介
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1991 年 57 巻 2 号 p. 247-255

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抄録

リンゴ斑点落葉病菌が生成するAM毒素は宿主細胞の細胞膜と葉緑体の2ヵ所に初期作用を示し,それぞれ電解質異常漏出と明下CO2固定阻害を誘起する。AM毒素Iは,感受性リンゴ葉には10-8Mの低濃度まで電解質異常漏出や明下CO2固定阻害を引き起こし,壊死斑を形成した。一方,中程度抵抗性リンゴやナシ葉では,電解質の異常漏出と壊死斑形成は10-5Mの毒素濃度で誘起されたが,明下CO2固定阻害は,10-7∼10-6Mの濃度でも認められた。さらに,10-6∼10-5Mの毒素で処理した抵抗性や非宿主葉では,電解質の異常漏出や壊死斑形成は誘起されなかったが,CO2固定阻害が認められた。また,感受性や中程度抵抗性葉では,電解質異常漏出や壊死斑の誘起される毒素濃度で非病原菌の感染が誘発されたが,抵抗性や非宿主葉では,CO2固定阻害のみられる毒素濃度でも感染誘発は起こらなかった。一方,SH基修飾剤で処理した感受性葉では,毒素による壊死斑形成や電解質異常漏出は顕著に抑制されたが,明下CO2固定阻害は抑制されなかった。また,このような修飾剤処理葉では,病原菌の感染が抑制された。以上の結果から,AM毒素は宿主細胞膜と葉緑体に初期作用を示すが,毒素が宿主特異性決定因子の役割を果たすためには細胞膜への作用が重要であり,毒素による細胞膜機能の障害が菌の感染を誘発することが示唆された。

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