日本植物病理学会報
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CMV感染タバコ植物体中におけるCMV病徴発現遅延成分の生成
大木 理匠原 監一郎高見 恭成井上 忠男
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1991 年 57 巻 3 号 p. 326-333

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抄録

CMVを接種したタバコ植物体中におけるCMV病徴発現遅延成分(SDC)の生成について検討した。6∼8葉期のタバコ(品種Xanthi)の下位2葉にサテライトRNAを含まないCMVのpepo分離株を100μg/ml接種して,25°C, 16時間日長条件で育苗した。7日後に接種直上位葉汁液を汁液接種と同様の方法で健全タバコに処理し,その4日後にCMV 10μg/mlを接種したところ,汁液自体に感染性がなかったにもかかわらず約40%の個体で病徴発現が4∼8日遅延し,汁液中にSDCが含まれていることが示された。SDCはタバコでは処理2∼8日後に移入葉から検出でき,また4∼8日後には移入葉から上位葉へ移行した。SDCはキュウリとトマトでのCMVの発病も遅延させ,アブラムシ接種したCMVにも効果があったが,Chenopodium quinoaとジュウロクササゲでの局部病斑の出現,タバコでのTMVあるいはPVYによる病徴発現は遅延させなかった。野外条件下で,SDCを繰り返し処理したタバコの多くは発病が4∼20日間遅延した。接種直上位葉汁液中にはCMV抗原が検出される場合があったが,それとSDC効果の含有とに相関関係は認められなかった。SDCの効力はRNase A処理により失われた。また,SDCを含む汁液中からは電気泳動法によりCMVの2本鎖RNA3∼4に相当するバンドが検出されたが,CMVの1本鎖RNA3またはRNA4によるタバコへの処理ではSDC様の病徴発現遅延効果は認められなかった。

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