日本植物病理学会報
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ビワ植え付け時のがんしゅ病菌接種がその後の樹体生育ならびに果実生産性に及ぼす影響
森田 昭
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1991 年 57 巻 5 号 p. 629-633

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抄録

ビワ苗にがんしゅ病菌を接種し,その後の生育,病斑形成および果実生産に及ぼす影響を無接種区と比較
検討した。
樹高,幹径および樹冠面積では,頂芽接種区は4∼5年後から,接ぎ木部接種区では2年後から被害が現れたが,葉接種区では差が認められなかった。
葉の生育は頂芽接種区および葉接種区ともに総葉数には差がみられなかったが,旧葉数が少なく,新葉数は多く,接ぎ木部接種区では旧葉数,新葉数ともに少なく,葉面積も小さかった。
枝の生育は頂芽接種区では枝数は多いが枝長は短く,接ぎ木部接種区では枝数,枝長ともに劣ったが,葉接種区では差がなかった。総病斑数は頂芽接種区が最も多く,次いで接ぎ木部接種区,葉接種区の順であった。
根重は無接種区が最も重く,次いで葉接種区で,頂芽接種区,接ぎ木部接種区では非常に減少した。
果実の生産性は,頂芽接種区と接ぎ木部接種区では花房数,花蕾数および総果数等は少なく,1果重も軽かった。
以上のように,本病の苗時代における発病はその後の生育を阻害し,生産性を大きく低下させることを実験的に証明した。

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