日本植物病理学会報
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ポプラから分離した白紋羽病菌のin vitroでの分生胞子形成と病原性
渡辺 恒雄
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1992 年 58 巻 1 号 p. 65-71

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抄録

1984年頃,香川県坂出市香ノ州工業団地に植栽したポプラ,ネズミモチ,マツ,サツキ,ウバメガシなどの緑化樹木に立枯性病害が発生した。試料としたポプラの根部組織からは白紋羽病菌特有の白い菌叢と菌糸に洋梨形の膨らみをもつ2菌株(84-373; -374)が得られ,そのうちの1菌株が変異し,分生胞子を形成した。PDA培地上の培養菌叢は初め白色,やがて部分的に着色,約3ヵ月後には,菌糸塊または菌核とともに,分生胞子形成を認めた。分生子柄は直立,褐色,分岐を繰り返し,通常高さが500μm以上,幅が2.5∼2.8μm,各分枝先端の胞子形成部位(通常30∼65μm,幅が7.5μm)には2列になって2∼30個の分生胞子を密集し形成した。分生胞子は無色,単胞,卵形または長楕円形,3.7∼5×2∼2.2μmである。なおin vitroでの分生子柄束の形成は認められない。以上のことから,本菌は白紋羽病菌(Rosellinia necatrix)の不完全世代Dematophoraと同定した。また,寒天培養覆土接種法により,クロマツ稚苗への強い病原性が確認された。

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