1992 年 58 巻 1 号 p. 83-86
イネ萎縮ウイルス(RDV)の2本鎖RNAゲノムは,高濃度(7.5∼10%)のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)において移動度の遅いほうからS1-S12と名づけられている。最近,多くのゲノムセグメントの塩基配列が決定され,S4とS5およびS9とS10の間で電気泳動度から算出した分子量に逆転があることが示された。そこで,種々の泳動条件下で,RDVゲノムセグメントの泳動度を比較した。4種の緩衝液を用いた1%アガロース電気泳動では,分子量の順に泳動した。一方,SDS-PAGEではゲル濃度を5%にするとS9とS10の泳動速度はほぼ一致し,4%ではS9のほうがS10より速く泳動した。SDS-PAGEは2本鎖RNAの分離能を高める目的で用いられることが多いが,以上の結果からゲルの濃度や種類によって移動度が異なる分子種があることが明らかにされた。