抄録
AF毒素Iを処理した感受性イチゴ葉細胞で生じた原形質変性は,AK毒素Iにより引起こされた感受性ニホンナシ葉細胞での原形質膜変性と類似していたが,以下のいくつかの点で異なる構造変化を示すことがわかった。1)原形質連絡糸部位に出現する原形質膜陥入は小規模である。2)陥入部に貯溜する多糖類成分と膜片は少量である。3)細胞質に出現するゴルジ小胞の数は対照区よりも多いが,AK毒素Iによる原形質膜変性部位で見られたものほど多くはない。4)原形質膜の陥入の出現頻度は低い。これらの構造変化の相違は,AF毒素Iの作用機序がAK毒素と同じでなく,若干異なることを示す。一方,アンチモン酸カリウム固定法と分析電顕を用いて,AF毒素Iを処理したイチゴ葉細胞におけるイオン漏出部位を調べた結果,原形質連絡糸近辺の原形質膜から細胞内のMgとNaイオンが漏れていることが明らかとなった。同様の結果は,AK毒素Iを処理した感受性ニホンナシ葉でもすでに知られており,微少型原形質膜変性や激烈型原形質膜変性と膜透過性の失調との間に密接な関係があることが示唆された。