日本植物病理学会報
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タバコモザイクウイルス感染キュウリ子葉における酵素活性およびタンパク質の変動
植草 秀敏菅沢 康雄寺岡 徹細川 大二郎渡辺 實
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1993 年 59 巻 2 号 p. 107-113

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抄録

キュウリ子葉におけるタバコモザイクウイルス(TMV)の局在化と,酵素活性およびタンパク質の変動との関係について検討した。キュウリ子葉におけるペルオキシターゼ(PO)およびリボヌクレアーゼ(RNase)活性はTMVの感染にともなって増加したが,全身感染性のCGMMVの感染によっては増加が認められなかった。また,アクチノマイシンD (AMD)の処理でTMVの局在化が弱められた子葉では両酵素活性の著しい増加が認められた。活性が増加した場合, POおよびRNaseの酸性アイソザイムには変化が認められなかった。ポリフェノールオキシターゼの活性はTMV感染キュウリ子葉においてほとんど検出されなかった。これらの3酵素はキュウリ子葉におけるTMVの局在化に直接関与しないと思われた。キュウリに壊死病斑を形成するタバコネクローシスウイルス(TNV)の感染およびサルチル酸の処理によってキュウリ子葉に,電気泳動的に検出できる2種類の感染特異的タンパク質(PRp)が誘導された。しかし,これら2つのPRpはTMV感染キュウリ葉からは検出されなかった。また,サリチル酸処理によってこれらのPRpを誘導したキュウリ子葉ではTMVの増殖量やstarch-lesionの直径に変化は認められなかった。それゆえ,これら2つのPRpはキュウリ子葉におけるTMV局在化とは関与しないと思われた。キュウリ子葉にTMVを接種後,経時的に14C-アミノ酸を取り込ませてタンパク質の合成を調べたところ,接種24時間後頃に対照には認められない新しいタンパク質のバンドが検出された。さらに,局在化を弱める処理(AMD処理, ZYMVの前接種)を行った場合には,このバンドは検出されなかった。それゆえ,このタンパク質はキュウリ子葉におけるTMVの局在化に直接関与するかもしれない。

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