日本植物病理学会報
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雨よけ被覆と底面給水によるイチゴ炭そ病潜在感染株の発病抑止効果
岡山 健夫
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1993 年 59 巻 5 号 p. 514-519

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抄録

イチゴ炭そ病(Glomerella cingulata, Colletotrichum gloeosporioides)の潜在感染株による発病を調べ,雨よけ育苗と底面給水による発病抑止効果を検討した。前年の発病圃場から採取した潜在感染株は,育苗圃への植え付け時期である4月には外見上明らかに健全に見えた。しかし,潜在感染株を親株として育苗圃に植え付けると,6月に親株の葉柄に病徴が現れ,ランナーや子苗が発病した。雨よけ育苗は子苗の発病を軽減したが,潜在感染している親株が発病すると,子苗に伝染して効果は不十分であった。潜在感染親株および子苗の発病には育苗中の灌水方法が影響し,マットを利用した底面給水によって発病が顕著に抑えられた。底面給水と雨よけは,接種親株に起因する子苗の発病についても有利に抑制した。炭そ病菌は発病した親株のランナーの褐変部から高率に分離され,無病徴ランナーからほとんど分離されなかった。底面給水で養成した苗のランナーから分離される病原菌の分離頻度は,スプリンクラーの場合よりもはるかに低率であった。以上の結果から,雨よけ栽培と底面給水の併用は,イチゴ炭そ病防除に有効な育苗方法であることが明らかになった。

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