1993 年 59 巻 6 号 p. 702-708
ヤーコンの甘味資源作物としての特性が四国農業試験場で調査されている。1992年6月初め維管束が褐変して萎れる個体が発見された。発病株率は7月上旬まで急速に増加し,病勢は盛夏に停滞した。病斑部からの細菌の漏出は少なかったが白色,円形で中央部にくぼみのある集落の細菌が均一に分離された。分離細菌はジャガイモ塊茎切片を腐敗させ,茎への有傷接種でヤーコンを萎ちょうさせた。本細菌はグラム陰性,発酵性,硝酸塩の還元,インドール,アセトインの産生,レシチナーゼ,アルギニン脱炭酸酵素活性が陽性,メチルレッド試験が陰性で, 37°Cで生育し38°Cで生育しなかった。メリビオース,ラフィノース,イヌリンから酸を産生し, L-酒石酸,マロン酸を利用したが,マルトース,トレハロース, D-アラビノースは利用しなかった。以上から,本細菌をErwinia chrysanthemiと同定した。さらに, Dickeyにより提案されたE. chrysanthemiの細菌学的性質に基づくsubdivisionに照らし合わせると本菌はV群に類別される。病名としてヤーコン萎ちょう細菌病(bacterial wilt of yacon strawberry)を提案した。