日本植物病理学会報
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ウドンコ菌の吸器に就て
平田 幸治
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1937 年 6 巻 4 号 p. 319-334

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抄録

1. 本報告はウドンコ菌の吸器の發育,構造と吸器嚢に就ての實驗,觀察の結果である。
2. 分生胞子の發芽は生葉上では,酒精で處理し水洗したタマネギの塊莖又は植物の葉の表皮上に於けるより劣る。この害作用は寄主の葉にも認められる.
3. 穿入菌糸の形成には植物細胞から滲出する物質の刺戟を要しない。
4. 外部寄生性のウドンコ菌の吸器はErysiphe graminis型とE. cichoracearum型との2つに大別される。何れに於ても吸器の楕圓體の兩端に突起ができるが,前者では突起が外方に向つて指状に伸び,後者では囘旋しつゝ伸びて楕圓體の表面を蔽ふ。
5. 極めて若い吸器は寄主細胞の原形質と直接に接するが.成長した吸器は透明な液體を含む吸器嚢によつて常に隔てられる。吸器嚢は最初一般に吸器の首部に近い所に現れ,次第に先端に及んで,吸器全體を取卷く。吸器の發育するにつれて膨張し,球形,楕圓形の緊張状態にある。
6. 吸器嚢は中性鹽類の溶液では菌,寄主細胞が死んでも膨張しその形は崩れないが,アルカリ性溶液,無機酸には顯著な作用を受ける。多種の色素に染まる。
7. 吸器が古くなると突起の構造が崩れ,吸器嚢は膨張状態を失ひ,後には吸器と寄主細胞の内容との境が見分けられなくなる。
8. キリンサウに寄生する菌の吸器嚢は寄主細胞の原形質の形成物と思はれる極めて厚層の褐色の物質で取卷かれる。

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