ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)遊走子のう(胞子)の懸濁液を調製して間接発芽(発芽)適温の14°Cに置いても,形成直後の若い胞子は発芽に長時間を要した。懸濁液を発芽不適温度の22°Cに6時間以上置いて胞子の齢を進めてから14°Cに置くと,ほとんどすべての胞子が1時間以内に発芽した。したがって,遊走子のうは形成直後は速やかに発芽する能力を持たず,一定の時間を経過してその能力を獲得すると考えられたので,この現象を「成熟」と称した。成熟は胞子を形成しているコロニー上でも懸濁された水中でも進み,成熟に好適な温度は18∼22°Cであり,これらの温度における成熟所要時間はおよそ6時間であった。26°C以上の高温と15°C未満の低温では成熟が抑制された。また成熟胞子の持つ速やかに発芽する能力は,26°C以上の高温の水中では速やかに失われた。