1995 年 61 巻 5 号 p. 481-484
キリてんぐ巣病の実用的な診断法を開発するために,感染樹体内におけるファイトプラズマの分布と季節的消長をPCR法を用いて調査した。ファイトプラズマは花芽の奇形を呈した枝の樹皮において,5∼6月から10月まで効率よく検出されたが,枝の違いにより季節的消長が認められた。奇形花芽が現れない枝の組織からの検出頻度はきわめて低く,10月になってはじめて高率に検出された。すなわち,ファイトプラズマは同一感染樹体内でも枝と枝の間でその検出頻度が異なり,不均一に分布していることが明らかとなった。これらの結果から,正確な診断を行うためには1被験樹あたり少なくとも数本の枝を選んで試料を採取する必要があること,試料採取時期として秋が適していることが明らかとなった。