日本植物病理学会報
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海洋細菌Alteromonas sp. 79401株のキチン分解酵素遺伝子を導入した大腸菌によるBotrytis属植物病原糸状菌の育成阻害
平八重 一之平田 暁子阿久津 克己原 三郎Ilkka HAVUKKALA西沢 洋子日比 忠明
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1996 年 62 巻 1 号 p. 30-36

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抄録
海洋細菌Alteromonas sp. 79401株は,その高いキチン分解活性によって,培地上で植物病原菌Botrytis cinereaおよびB. fabaeの分生胞子の生育を阻害した。この海洋細菌のキチン分解活性をバイオコントロールに利用する目的で,本菌株のキチン分解酵素遺伝子を含む約12kbの染色体DNA断片をプラスミドpBR322を用いてクローニングした。得られた組換えプラスミドpALCHI1を導入した大腸菌DH5株をB. cinereaあるいはB. fabaeと対峙培養したところ,形質転換株のコロニーの周囲で培地中のコロイダルキチンが分解されるとともに,両病原菌の著しい生育阻害が認められた。すなわち,両菌の胞子発芽および菌糸の生育が阻害され,胞子と発芽管の膨潤および菌糸先端部の分解が光学顕微鏡下で観察された。このことは,導入した遺伝子が大腸菌で発現し,菌体外に分泌されたキチン分解酵素によって両菌の細胞壁が分解されたことを示している。以上の結果から,海洋細菌Alteromonas sp. 79401株のキチン分解酵素遺伝子をBotrytis属菌およびその他の植物病原菌類のバイオコントロールに利用し得る可能性が示唆された。
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