日本植物病理学会報
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ビワたてぼや症(新称)とその原因
森田 昭
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1997 年 63 巻 1 号 p. 44-50

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抄録
ビワ果実には苞の先端から果頂部に向かって果面にかすり状の縦すじが発症することから,栽培者間でたてぼや症と称されている症害があり,その原因を明らかにした。本症の発症果面部位を走査電顕で観察した結果,ビワサビダニ(Aceria sp.)の食害痕とともに糸状菌とくにBotrytis sp.の分生子や菌糸が多数観察された。発症果から優占的にBotrytis sp.が分離されるとともに,苞内にはビワサビダニが多数生息していた。本症状は発育途中で苞を人為的に除去した場合発症がみられなかった。ビワの苞内およびたてぼや症発症部位から分離されたBotrytis sp.をビワサビダニが生息する苞内に分生子懸濁液で注入接種するとたてぼや症が再現された。よって,たてぼや症の発現は苞内でのBotrytis sp.とビワサビダニの共存,増殖に起因すると結論される。たてぼや症の発症果面部位から分離されたBotrytis sp.は形態,培養的性質,病原性などから,ふつうの灰色かび病菌Botrytis cinerea Pers.: Fr.と同定された。
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