1997 年 63 巻 4 号 p. 328-333
福島県において激しいえそ症状を示していたリンドウより分離されたウイルス(NC)について性状を調べ,他のクローバ葉脈黄化ウイルス(ClYVV)分離株と比較した。NC株を13科26種の検定植物に汁液接種したところ10科19種に感染し,宿主範囲と病徴はClYVVと似ていた。SDSゲル内二重拡散法でNC株はClYVVとインゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV)のいずれとも反応したが, ClYVVとより強く反応した。そこで, NC株および同じく福島県でインゲンマメより分離されたClYVV-NFUについて外被タンパク遺伝子と3'非翻訳領域の塩基配列を決定した。両分離株の3'非翻訳領域は同一で,その相同性は既報のClYVVと93.3~99.4%, BYMVとは73.7~77.1%であった。また,外被タンパク質のアミノ酸レベルでは, NC株と既報のClYVVとは91.6~98.2%, BYMVとは72.9~76.5%で,特に, NC株とClYVV-NFUは大変高い相同性を有していた。以上よりリンドウえそ萎縮病の病原ウイルスはClYVVと同定した。