1997 年 63 巻 4 号 p. 345-350
1993年弘前市内でシナノキ(Tilia japonica)の一部の枝で芽の不発芽および発芽遅延がみられ,その後発芽,展開した葉の多くは夏までには黄変,落葉し,やがて細枝や小枝の枯死脱落する症状がみられた。また隣接したヤマモミジ(Acer palmatum)にも1994年11月以降,葉の萎凋が認められ,しだいに小枝の先端から枯れ上がり,その後枯死部分はしだいに下方におよんだ。両樹の発病枝を横断あるいは縦断してみると導管部に褐変がみられた。そしてシナノキおよびヤマモミジの褐変導管部からは高率に同一種のVerticillium菌が分離された。本菌のPSA平面での菌叢は初め白色でのちに黒色となった。古い菌叢には微小菌核が形成され,分生子柄の基部細胞は無色,菌叢生育が30°Cでも十分可能であった。以上のことから,分離菌はVerticillium dahliae Klebahnと同定された。
分離V. dahliaeはシナノキ,ヤマモミジのほか,ナス,トマトなど供試20種のうち18種の野菜や花卉に病原性を示した。今回シナノキおよびヤマモミジからV. dahliaeが分離され,病原性が証明されたのは高木としてはわが国で初めての報告である。なお,本菌によるシナノキおよびヤマモミジの病害を半身萎凋病と呼ぶことを提唱する。