日本植物病理学会報
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キュウリモザイクウイルス(CMV)の感染性に与えるpHの影響
ウイルス感染に対する表皮RNaseの作用
大野 浩長谷 修江原 淑夫
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1997 年 63 巻 6 号 p. 445-449

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抄録

ササゲ(品種:黒種三尺)およびタバコ(品種:ky 57)に対するCMV(普通系)の感染性は懸濁緩衝液の種類, EDTA添加に関係なくpHが6.0, 7.0, 8.0の順に高い。この傾向はCMV RNAを用いた場合も同様であった。滅菌水に溶解したウイルスを接種後,直ちに接種葉をpH 6.0-8.0の緩衝液に浸漬した場合,感染性に影響はないことから, pHは植物細胞の感受性に影響を与えるのではなく,接種源に影響するものと考えられた。しかし,このpH範囲でウイルス粒子の形態に変化は認められないことから,摩擦接種の際表皮から滲出する物質との関係が注目され,タバコ葉を用いて検討した。その結果,表皮細胞液(表皮細胞滲出液,または汁液)中のRNaseの挙動と感染性におけるpHとの関係に相関が認められた。すなわち表皮細胞液のRNaseによるCMV RNAの分解はpH 6.0>7.0>8.0の関係であった。またこのRNaseは粒子内部のウイルスRNAを不活化することなくウイルス表面に結合し,その結合量(RNase活性)はpH 6.0>8.0の関係にあった。したがってpH 6.0におけるCMVの感染性低下の原因の一つには接種の際滲出する表皮細胞液中のRNaseの関与が考えられ,宿主細胞侵入後ウイルス粒子に付着したRNaseが増殖に阻害的に働くことが推定された。

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