日本植物病理学会報
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日本に発生するインゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV)の病原性と血清学的性状の比較
笹谷 孝英野津 祐三小金澤 碩城
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1998 年 64 巻 1 号 p. 24-33

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抄録

日本の異なる地域および植物から分離したインゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV) 28分離株について,判別植物の反応と血清反応を比較した。BYMVはインゲン15品種の反応で4つのPathotypeに分けることができた。Pathotype Iはインゲン品種の本金時のみに全身感染を示し,他の品種には局部感染であった。Pathotype IIは本金時,ケンタッキーワンダーおよび他4品種に全身感染を示し,Pathotype IIIは本金時,ケンタッキーワンダー,マスターピースおよび他4品種に全身感染を示し,Pathotype IVは今回用いた15品種すべてに全身感染を示した。pathotype IIに属するBYMVはソラマメにおいて他のPathotypeに属すものより高い種子伝染性を示した。BYMVあるいはクローバ葉脈黄化ウイルス(ClYVV)に対する16種のモノクローナル抗体(MAb)を用いたTAS-ELISAで,BYMV28分離株には血清学的差異が観察され,病原性とある程度一致したが,ポリクローナル抗体を用いたDAS-ELISAでは,分離株間での顕著な差異は観察されなかった。MAb-1F3はPathotype I, II, IIIとClYVVの1株と反応した。MAb-2C4はPathotype IIのみと反応し,MAb-5F2は今回用いたBYMVとClYVVすべての株と反応した。MAb-2B4, -2C5, -3F9, -3F11, -4G8および-4H9はPathotype IIとIIIのすべてと,Pathotype IとIVの一部の株と反応した。MAb-1A2と-2H8はPathotype IIIとClYVV2分離株と強く反応した。以上より,日本のBYMVは病原性および血清学的に変異に富んでおり,4つのPathotypeに分かれることが明らかとなった。

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