1998 年 64 巻 4 号 p. 244-248
未知の塩基配列を持つ二本鎖RNAを効率的にクローニングする方法を開発した。材料として,イネ黒条萎縮ウイルス(RBSDV)に感染したイネより直接抽出した10分節二本鎖RNAゲノムを用いた。二本鎖RNAゲノムの+鎖および-鎖の3'末端にポリAポリメラーゼでポリA配列を付加し,オリゴdT配列を持つアダプタープライマー(AP)を用いた逆転写反応の鋳型とした。続いて,作製したファーストストランドcDNAを鋳型として,AP中のアダプター領域と同じ配列を持つプライマーを用いてPCRを行った。その結果,RBSDV S5からS10の全長に対応する増幅産物がアガロースゲル電気泳動で確認された。プラスミドベクターにクローニングした結果,S8, S9, S10の全長cDNAクローンを作製することができた。さらに,S10の全長cDNAを含む6クローンの塩基配列解析から,本クローニング方法は変異を起こす可能性が少ないことが明らかとなった。これらの結果から,この方法は未知の二本鎖RNAの効率的な全長クローニングに応用できると考えられた。