1998 年 64 巻 4 号 p. 294-298
赤色集落を形成するSerratia marcescens F-1-1株は,キュウリ灰色疫病菌Phytophthora capsici P-9-2に対し強い拮抗作用を示すが,その拮抗性は,本菌株の赤色色素産生能と関連する。そこで,この拮抗性赤色色素の純化およびその同定を行った。水不溶性の赤色色素は,平板培養からかきとった菌体からエタノールで,ついでクロロフォルムで抽出され,シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより純化した。P. capsici P-9-2に対する抗菌活性を指標にして,抗菌活性を有する色素を単離した。この物質は,NMR,マススペクトル等の解析から,既知物質prodigiosinと同定された。Cochliobolus miyabeanus, Pythium spinosum, P. ultimum等の植物病原菌,およびClavivacter michiganensis subsp. michiganensis, Erwinia carotovora subsp. carotovora等の植物病原細菌に対しても抗菌活性を示した。これらの結果から,S. marcescens F-1-1株がキュウリ灰色疫病のみならず,他の多くの植物病害の生物防除に利用できる可能性が示唆された。