日本植物病理学会報
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ジャガイモ疫病菌菌体エリシター処理を施したジャガイモ塊茎および原形質膜画分におけるカルシウムイオンの動向と活性酸素生成・防御遺伝子発現との関連
三浦 由雄吉岡 博文朴 海準川北 一人道家 紀志
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1999 年 65 巻 4 号 p. 447-453

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抄録

クロロテトラサイクリン(CTC)は生体膜等の疎水環境下にあるカルシウムイオンと結合して蛍光を発することが知られている。CTCで負荷したジャガイモ塊茎組織を疫病菌菌体エリシターで処理すると,処理濃度に依存して膜からカルシウムイオンの遊離を示唆する急激な蛍光の減衰が観察された。また,この蛍光減衰は,カルシウムチャンネルブロッカーであるベラパミルおよび細胞外カルシウムキレート剤であるEGTAの前処理で抑制された。ルミノールを用いて菌体エリシター誘導による活性酸素生成を経時的に測定したところ,蛍光の減衰は活性酸素生成に先行することが明らかになった。さらに,原形質膜画分に負荷したCTCの蛍光強度は,菌体エリシター処理により速やかに減衰した。防御遺伝子であるフェニルアラニン・アンモニアリアーゼ(PAL)の発現に対するカルシウム阻害剤の影響を調べたところ,菌体エリシター誘導によるPAL mRNAの蓄積は,ベラパミルおよびEGTA処理により著しく抑制された。以上の結果は,菌体エリシター処理により速やかに遊離した宿主細胞の膜結合型カルシウムが活性酸素生成や防御遺伝子の発現において重要な役割を果たすことを示唆する。

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