1999 年 65 巻 4 号 p. 460-464
1988年頃から,福井県で栽培されているエノキタケおよびヒラタケに軟腐症状で悪臭のある未知の病害が発生した。病斑から分離された細菌のうち,人工接種によってそれらのキノコと同様の病徴を示した代表菌株を選び,形態,生理的性質を調べた。その結果,本細菌は運動性のグラム陰性,桿状,周毛菌で,乳白色の集落を形成し,発酵的に糖を分解し,ジャガイモ切片を腐敗させた。その他,多数の細菌学的性質を調査し,既知のErwinia属細菌と比較検討した結果,本細菌はErwinia carotovora subsp. carotovoraと同定された。本種によるエノキタケおよびヒラタケの病害の報告はないので,病名を軟腐病(英名:Bacterial soft rot)と提案したい。