65 巻 (1999) 5 号 p. 563-568
菌糸和合性(vegetative compatibility)を利用して,ホウレンソウ萎ちょう病菌Fusarium oxysporum f. sp. spinaciae個体群の日本における地理的分布および圃場内における個体群構造について検討した。16府県のホウレンソウ産地で得た日本産100菌株をFiely et al. (1995)によるVCGs (vegetative compatibility groups) 1, 2, 3に分類したところ,VCGの構成比はVCG 1が46.0%で最も多く,VCG 2は39.0%, VCG 3は7.0%であった。地理的な分布については,VCG 1, 2はわが国に広く分布することが明らかになった。VCG 3は供試菌株の多かった1県のみに分布した。VCG 1および3に分類された菌株はすべて感受性品種「おかめ」に対して病原性を示したが,VCG 2に分類された菌株のうち,2菌株は病原性を示さなかった。また,VCG 2に所属する菌株の病原力には幅がみられたが,平均するとVCG 1および3の病原力に劣った。
次に連作圃場を16区分して採集した発病個体の根部維管束組織から分離したF. oxysporum 130菌株のうち106菌株がいずれかのVCGに分類され,感受性品種に対して強い病原性を示した。94菌株(72.3%)はVCG 1に分類され,この個体群が圃場内に優占的に広く分布しており,その上で,構成比は低いがVCG 3が圃場内の一部に一定の集団を形成し,VCG 2やその他の不和合性菌群とともに,圃場内で多様な個体群構造を形成していることが明らかになった。また,本研究によって既知のVCGに属さない不和合性のF. oxysporum f. sp. spinaciaeの存在が新たに明らかになった。