2003 年 69 巻 3 号 p. 198-204
1990年,青森県三戸地方のセイヨウナシ圃場において,果実に黒色の小斑点が多数生じる病害が発生した.病斑部からは高率にCylindrosporium属菌が分離された.また1998年,同病害が多発した圃場において,葉に紫褐色∼黒褐色の斑点がみられ,翌年1999年5月に越冬した罹病落葉の斑点部にMycosphaerella属菌の偽子のう殻の形成が確認された.偽子のう殻に形成された子のう胞子の単胞子分離菌は培地上でCyliudrosporium型分生子を生じた.この分生子をセイヨウナシ果実に無傷接種した結果,黒色小斑点病徴が再現され,接種菌が再分離された.リンゴ果実に接種した場合,黒点病を生じた.またリンゴ黒点病菌をセイヨウナシ果実に接種した結果,黒色小斑点症状が生じた.本菌は形態的特徴および培養性状からMycosphaerella pomi (Passerini) Lindau(アナモルフ:Cylindrosporium pomi Brooks)と同定される.本菌によるセイヨウナシの病害としてはじめての報告である.本病害をセイヨウナシ黒点病(Mycosphaerella fruit spot)と称することを提案する.