日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
弱病原性プロトクローンによるダイズ白絹病の生物的防除効果
仲川 晃生
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 69 巻 3 号 p. 205-211

詳細
抄録

白絹病菌(SR8501)のプロトプラストから作出した弱病原性プロトクローン株を用いたダイズ白絹病の生物的防除効果について検討した.プロトクローン株は,PSA培地上で野生株と対峙培養させると,拮抗性を示す菌株(PC-2, PC-6)と拮抗性を示さない菌株(PC185)に分かれた.
ガラス室条件下で殺菌土壌を使ったポット試験の結果,プロトクローン株を予め土壌に処理した場合(前処理)ならびに病原性野生株と同時に処理した場合(同時処理)は,ダイズ白絹病に対する生物的防除効果が認められた.これに対して,野生株で予め汚染させた土壌にプロトクローン株を処理した場合(後処理)は防除効果が認められなかった.しかし,後処理でも無殺菌土壌を用いた場合には,プロトクローン株の防除効果は認められた.生物的防除効果は拮抗性を示すプロトクローン株PC-2, PC-6では高かったが,拮抗性のないPC-185では効果がなかった.
2年間にわたる圃場試験の結果,プロトクローン株PC-2, PC-6の前処理,同時処理および後処理のいずれの場合も生物的防除効果が認められた.しかし,前処理でもプロトクローン株処理と野生株接種までの期間が長いと効果が劣った.
白絹病菌は自然条件下で担子胞子を作らず圃場条件下での病原性変異株の収集は難しいが,プロトプラスト化による弱病原性プロトクローン株を作出し利用することは,今まで生物的防除技術の開発が難しかった病害を防除するための新しい有効な手法であると考えられる.

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top