日本植物病理学会報
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稻胡麻葉枯病菌の寄主體侵入及び分生胞子の發芽と空氣濕度との關係に就きて
桂 〓一
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1937 年 7 巻 2 号 p. 105-124

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抄録

1.本論文は主として稻胡麻葉枯病菌分生胞子の寄主體侵入竝にその發芽と空氣濕度との關係に就きて述べ,次いで本菌分生胞子の發芽及び新生胞子形成と空氣濕度との關係を論じたるものなり。
2. 硫酸を用ひて空氣濕度を調節せる乾燥器内に,本菌分生胞子懸游液を噴霧接種したる稻苗をその水滴の乾くを待ちて納め, 25℃の京大式定温接種箱中に18時間保ちたる後取出して温室内に置きたるに,關係濕度100%に於て接種したるものは最も高き發病率を示し,以下空氣濕度の低下に略々比例して發病率を減少し,關係濕度89%に於ては全く發病するものなかりき。
3. 本菌分生胞子懸游液の點滴を附着せしめて乾かしたるスライドグラスを,硫酸にて空氣濕度を調節したる肉池内に納め, 25℃の定温器中に18時間保ちたる後その發芽を檢したるに,關係濕度100%に於ては最も高き發芽率を示し,以下空氣濕度の低下に略々比例して發芽率を減少し,關係濕度89%に於ては全く發芽するものなかりき。
4. 本菌分生胞子は水滴の存在に於て發芽頗る良好なれども,一度水に懸游したる後乾かしたる胞子は凡そその乾燥時間に比例して多少宛發芽力を減殺若しくは遲延せしめらるるものの如し。
5. 本菌分生胞子は,水滴を與へたる場合も與へざる場合も略々97.5%以上の空氣濕度に於て, 25℃ 18時間にして既に發芽管の先端に新生胞子を形成し,同24時間にして夫等の新生胞子は略々成熟し且つ再び發芽するもの多きものの如し。

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